六歌仙のただ一人の女性で絶世の美女としても知られている小野小町の舞踊をTVで見る。
花の色は移りにけりないたづらにわが身世にふるながめせしまに
小町の老後は憐れにも物乞いになってしまっていた。舞台花道からやせて白髪混じり、破れ網代笠を手に杖にすがるように疲れた様子で登場する。
舞台上手には高野山からの僧が同じく休憩中、小町が腰かけたそこは卒塔婆で古くとも仏体だから他の場所へ移りなさいと意見するが、一言一言に反論し「物体も衆生も隔たりはない」と説き砕く。僧は説法を敬い名を聞き小野小町と知る。
失った若い頃の優雅さを嘆きしばらく己が身の憐れを嘆いていたが、音曲の調べが急に変わると突然小町の様子も変わる。「小町の元へ通おう」と言い出す。不審に思った僧が 問うと深草少将の怨念が小町に憑いたものであった。
当時女性は家から外出などしないので男女の仲を結ぶ術は和歌か文くらいであった。美しい文字、美しい言葉、秀でた和歌が詠める女性が教養のある素晴らしい人だと評価されたそうだ。そしてその女性に恋をする。
深草の少将もそんな一人であった。小町は百夜通い続けたなら思いをうけると約束する。
嘘とは知らず月の夜も闇の夜も風や雪の夜も暁に着きそのまま帰る。帰ってはまた行く。遂に九十九夜の日念願叶うと喜び出かけるが疲れと寒さで息絶えた。そして僧は道端に咲く菊の花を手向け「仏門に入ろうな」と 小町に呼びかけると小町がうなずくところで幕が下りる。
せつない話である.
今の世ならば社会保障もあり、通信手段も色々あるが当時はそんなものがなかった時代。物乞いまでの零落ぶりとは…
しかしその衣装や身のこなしの端々に昔の教養高さと暮らしぶりが垣間見える。
衣装は濃い茶色に細い縞が織りこまれている。柄は風にそよぐすすきが配されて五つ紋、帯は無地の銀ねず,帯締を低くして老婆を表現しているのであろうか。指の動きに品のよさが醸し出され、小町のきっぱりとした性格もあらわれている。
久し振りに見た舞踊だが最後まで目が離されなかった。
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