心淋し川(うらさびしがわ)のほとりの両袖に長屋が四つ五つ固まっているのをまとめて心町(うらまち)と呼ぶ。
この心町の住民たちについてのお話、なんとも風情のある名の川であるが、
“その川は止まったまま、流れることがない。
たぶん溜めこんだ塵芥(ちりあくた)が、重すぎるためだ”
と言う書き出し、否が応でも次の言葉を探してしまう。
“岸辺の杭に身を寄せる藁くずや落ち葉は、夏を迎えて腐りはじめている”
子どもの頃これほどではないが似たような汚れた川が身近にあったような気がする。
その頃は別に汚いと言う気がしなかったが、いつまでも同じところでくるくると回る葉っぱなどの記憶がある。
それはさておき、そんな心町に住む人情味あふれた物語が始まる。
著者は西條奈加、先日読んだ「家族じまい」の著者 桜木紫乃も同じ北海道の作家である。
それゆえか冬の寒さの描写には心に刺さる思いさえする。
ここの住民たちはお互いの過去について詮索をしないのが心町の理(ことわり)。
ひと癖もふた癖もありそうな住民たちが生き直しが出来る場所でもある。
6つの短編になっているが底の方で繋がっている。何と言っても長屋だもの。
薄い壁や板で仕切っただけだから繋がっているのは当然と言えば当然の話。
いつしか私もそこに住む物見高い住民の一人になったような気がしてあっという間に読んでしまった。
少しずつ紹介して行こうと思います。