2015年12月31日木曜日

卵のふわふわ

著者の(宇江佐真理)さんは11月7日亡くなった。
その人の名は知らなかったが読書家の友人が面白いからと貸してくれた。今年の読み納めのこの本は江戸情緒豊かな時代小説

髪結い伊三次捕物帳で有名ということだったのでお江戸の事件簿かと思って読み進めるとこれが何とも平和な江戸の庶民の暮らしぶりが鮮やかな筆致で繰り広げられている。
北町奉行所の役人正一郎とその妻のぶ、そして舅の忠右衛門とふで夫妻の家族の日常から物語は始まる。
平和でないのは正一郎とのぶの仲、まだ子はいない。何をしても夫は声を荒げてのぶを叱る。
やがて二人の亀裂は大きくなりのぶは離縁を申し出る。
舅は何くれとのぶを庇ってくれるがそれものぶを引きとめる術にはならなかった。
一時別居という形でのぶは兄嫁家族もいる実家へは行かず伯母の料理茶屋に身を寄せる、しかしそこでも慣れない仕事で体を壊し実家の世話になるが兄嫁は迷惑顔。
見舞いにきた忠右衛門とふでの優しさにのぶは大泣きをする。

その間役所では殺人事件あり子供のかどわかし有りと正一郎や忠右衛門は奔走して事件解決に努める。
しかし、この物語は事件簿ではなく食べ物にまつわる物語。
黄身返し卵、淡雪豆腐、水雑炊など六つのタイトルで話は進んでいく。
卵のふわふわもその一つ。これが二人の仲を修復するのであるがいつも舅が「わし、腹がすいた」と言ってのぶに作ってもらったりする料理などである。
しかし、どれにも教訓を隠し味にして読み手を惹きつける手法だが押しつけがましさがないので素直になれる。

脇役の登場人物もそれぞれの味わいがなお一層物語に奥行きを広げている。何よりハッピーエンドで収まるのは歳の終りにふさわしく穏やかな気持ちになった。
天神机、手巾(しゅきん)女筆指南所(にょひつしなんじょ)など江戸の香りのする言葉を知ったのも収穫である。

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