各新聞社には社説ではなくもっと身近なことの出来事などを書くコラムがある。
机の整理をするたびに出てきてそれを読むたびに目が潤む切り抜きがある。
今日はその全文を紹介します。2016年1月21日と日付がある。
少年は信州の山里に預けられた。終戦の前年である。疎開者にまで食料は回らない。「働かせてください」。見知らぬ農家に押しかけて、稲刈りを手伝わせてもらった◆昼飯どきになった。農家のお嫁さんだろう。少年が持参した少量の麦飯を見て、表情をこわばらせた。と、やおらその弁当箱を取り上げて豚小屋にあけた◆あっけにとられている少年に女性は、新米の白い飯をギュウ詰めにした弁当箱を返して言った。「これは、いま食べちゃだめ」。赤ん坊の頭ほどもある握り飯を別に三つこしらえて、「さあ、お昼にしよう」。少年は流れる涙と握り飯を一緒にのみ込んだという◆当時14歳の少年は中村梅之助さんである。思い出を本紙に綴ったのは『遠山の金さん捕物帳』で人気沸騰の頃である。俳優修業の日々や結核を養生した青年期など随筆の材料に事欠かぬなかで、あの少年の日を選んでいる。順風のときは感謝し、逆境のときは身を励ます、そんな記憶が誰にも一つはある。梅之助さんにはそうだったのだろう◆きのう訃報に接した。85歳という。金さんの人情が胸にしみたのもうなずける気がする。
と結ばれている。
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