2015年8月21日金曜日

火花 その4

どんな世界にもいろんなタイプの人間がいる。
このお笑いの世界も例外でなく芸を突き詰めようとする熱意がかえって彼らを不安におとしめたり、また観客の受けが良かったときでさえ、その笑いに納得できないときがあるのだという。
舞台でうまくいかない日の憂鬱は次のライブで笑いを取る他にない。こんな夜は誰も相容れない。東京には全員他人の夜がある。
と書いている。群衆の中の孤独感の寂しさ、心もとなさがひしと読み手に伝わってくる。
そんな中にも二人のやりとりはさすが芸人と思わせるくだりがある。筋道にはあまり関係なさそうだがこんな小さな笑いが二人の生活苦を深刻にならずに読ませてくれるのだろう。

神谷はどんなにお金がなくてもいつものおごってくれる。
自動販売機の飲み物を買うとき例のごとく神谷は硬貨を何枚かいれたあと、小銭入れをぐるぐるとかき回す。見かねて徳永が十円玉を入れようとすると「いらん」と一喝され、それでもグルブルとかき回す。  
徳永は「そんなんしても小銭増えませんよ」「わかっとるわ。ここでお前に出させたら割り勘になってしまう」。あきらめて千円札を・・・
というくだりには思わず笑ってしまった。

笑いを取ってその裏に見え隠れする神谷の芸人魂が心臓の鼓動と同じリズムで脈打っている 。こんな部分はやはり現実に芸の世界に身を置いたものでしか書けないのではと思ってしまう。
               つづく

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