2020年5月19日火曜日

弟に知り合いの事として騎市と理世そして自分(知り合い)のことをかいつまんで話す。勘の良い弟は「相思相愛の男女に横恋慕」と言われうろたえる。弟なら自分は諦める、という。しかしその後友人として付き合えるかの問いに知り合いとは言っても既に弟は武一自身の事と察して「兄上のやり方を通せば」とさりげなく助言する。
父が武一の事を陰で「本当に強いのは負けないものでなく、何度でも立ち上がる事の出来る者」だと褒めていたと兄の逞しさを褒めた。
そんな弟の言葉に騎山家へ向かう足取りは少し軽くなった気がした。

騎山家に騎市はまだ江戸から帰っておらず当主の仁衛門であった。その人から『瓦州塾』の巴田木米(ともえだ もくべい)という人の名を聞く。
武一にとっては初めて聞く名前である。
その帰り道『瓦州塾』を俄かに思い出す。
13歳の頃剣道は騎市と同じ道場であったが学び舎は別であった。
『瓦州塾』は騎市が通う塾の名前であった。
「瓦は一枚きりでは用をなさないが何百何千と連なって屋根を覆うから雨風を凌げる。ご家中や町や国も同じなんだ」
と騎市が熱く語ったことを思い出した。
そしてその塾長が巴田木米なのだがずっと先生として騎市の話に登場したのでその名を忘れていたのだった。

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