2020年5月7日木曜日

せき超えぬ つづき

さて、「せき超えぬ」宙ぶらりんになってましたが、続きです。
振り返れば3月のことです。
なでしこについて横道にそれてしまったのでした。
第3章は「涼暮れ撫子」というお話。
箱根の関のお勤めをするようになった武一達も少しは慣れてきた頃。
男ばかりの役人の中に人見改めの女性が一人いる。
関を越える女性に不審な女性がいるとこの人見改めの出番である。
名を登世という。「鬼より怖い姥」などと陰口を言われている。
そこへもう一人人見女として女性が入ったというので大騒ぎ、年の頃なら三十前という。実は登世の娘で理世(りよ)という。
その理世を見て武一は驚く、峠道で難儀していた時水を分けてくれた通りすがりの女性であったからである。
回りの者にはそのことを言わずにおく。
気になる存在である。昨年嫁ぎ先から出戻ったということを聞き口元がほころぶ。

ある日一人の武家の女が足留めを受ける。
「入り鉄砲に出女」の時代である。
「希乃(きの)」というこの女性、実は敷見彰三郎なる夫がいたが余りの貧乏暮しに夫が、これ以上苦労は掛けられぬ。おまえはおまえの人生を生き直せと言って離縁になり下男と共に江戸から国許へ帰る途中だという。

希有な事にこの希乃と人見女の理世とは知り合いで共に夫から貧しさゆえに離縁された者同士であった。
二人は話すことを許される。そして希乃の揺らいでいた心が決まる。関所の黒い塀の際に揺れる小さな薄紅色に気付く。
「なでしこのとこなつかしき色を見ば……元の垣根を人や尋ねん」(ここで前にふれたとこなつがでてくる)
「あの花のように小さくとも長く咲こうと」決心して江戸にもどることなった。
その日の夕ぐれ時、武一は湯からあがって涼風に当たっていると理世に会う。理世も湯あがりに撫子柄の浴衣である。
例の水を分けてもらった礼を言うと理世も気付いていたという。ますます彼女の存在が気になる武一である。

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