関所の役人でありながら騎市のために、木米のためにそして理世のために武一に山越えの手だてを講じることへの迷いはもうなかった。
騎市と綿密な相談をしておく。
しかし冬の山越え、まして詳しい地図もなく道を知らぬものでは下手をすると死に直結するかもしれない。
武一は脱藩は出来ぬがせめて関の向こうまで騎一達を見送ろうと決心する。理世に逢ったことでその決心は揺るがないものとなった。
もしやの時の為に抜け道も講じる。
武一とて関の任務についたのは雪解け間近な頃で冬山の経験がない。
この山への立ち入りを禁じられていて竹一本すら伐採は禁じられている。しかし武一は時々、山中にたてられた柵に壊れがないかの見回り役の経験がある。
先月、勤番の折一か所大きく傾いた所を見つけた。がその日は忙しく報告をすっかり忘れていた。
その壊れが今もあるかを確かめに来たのだ。傾いた柵は更に傾き人が通れるほどになっていた。
ようやく木米、騎市との顔合わせ、武一は神部乃平治という農家の離れで世話になっていた。
その三日間武一は毎日山に入り山越えの道筋を探っていたのだ。
騎市、氷目付けの望月、乃平治たちは共に木米の瓦州塾の門人、そして理世は木米の妻である。
足軽の衛吉は武一を尊敬している。
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