2021年6月15日火曜日

きっかけ

翔太は素直でおとなしい真面目な子であった。
引きこもるまでは…


父の大澤正樹は父の代からの歯医者を受け継ぐ。 
しかし、少子化に加え、口腔衛生が教育のお陰で虫歯は減り、父、母と続いた大病にかなりの金がかかった事もあり、新しい高額な治療機器も導入する事も出来ず患者数は減るばかり。

そんなわけで、翔太を「この子は医者にしよう、歯学部ではなく医学部に」
と夫婦で誓いあった。歯科医と普通の医者とでは生涯所得にかなりの差が出る。同じ6年間医大に通い授業料もそう変わらないというのだった。

正樹の気迫は妻にも伝わり塾で励む十歳の息子の受験に徹底的に協力する。
やがて受験が始まり、夫婦で神社に詣で正樹は一ヶ月酒を断った。

そんな親子の苦労が報われ、翔太は第二志望の中高一貫校に合格!

しかしそれが夫婦にとって更に新しい、はるかに大きな引きこもりという苦悩を呼ぶことになったのだ。

中二の夏休みが終わった時、翔太は「もう学校に行きたくない」と言いだす。
明日になれば、しばらくすればと夏の疲れと思っていたがやがて本気で心配する。

そして学校に問いただすもいじめはないとの一点張りで仲の良かった友達の事もおしえてもらえずやがて7年の歳月が過ぎて行ったのである。


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